海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
昔、吉田秋生(あきみ)の『
河よりも長くゆるやかに』というコミックが好きでした。
私が買った版はとっくの昔に廃刊になっていますが、小学館文庫ででているので、新品で購入出来ます。
この『河よりも長くゆるやかに』という作品は、主人公ふたり組がオカマバーでやけくそになって『ナイナイシックスティーン』を歌ったりするという時代背景なのですが、その時代に(それぞれ重たい背景を背負っているくせに)呑気な高校時代を過ごすというものがたりです。
特に大きな事件は起きませんが、かれらの心の動きを繊細に丁寧に描いていて、私の大好きな物語です。
この後、世評は高いのですが、私にとってはどうものめり込めなかった『BANANA FISH』の方向に移ってしまい、吉田秋生という漫画家の事は忘れてしまっていました。
そもそも、仕事が忙しい時期に入ってしまっていたしね。
そして、実に久しぶりに読んだのが、この『蝉時雨のやむ頃』。
海街diaryという連作シリーズの第一作目で、(やっぱり、まだ読んでいないけど)『
ラヴァーズキス』という作品集とリンクしているそうです。
なぜ、久々に彼女の作品集を手に取ったかというと、偶然見つけたネットの批評がひじょうに好意的で、あの『河よりも長くゆるやかに』を思わせるものだったからです。
そして、一読。
予感は見事に的中、というか、こちらの予想を遥かに超える『良いお話』でした。
特に第一作目で表題作にもなっている、『蝉時雨のやむ頃』はちょっと他をもって代え難いほどの傑作になっていて、第二作目、第三作目も良くできているのですが、レベルが落ちて見えてしまう程。
古都鎌倉に住む3姉妹が、長年あうことが無かった父が山形で死んだという知らせを受けて向かうと、それまで会ったことも無かった、存在すら知らなかった腹違いの妹がいて……、という話です。
最初に山形に向かうのは次女と三女で、長女は夜勤なので行かないと最初は言っていましたが(看護婦なのです)、後から駆けつけてくるという展開になります。
そして、「向こう側」の家族との絡みが有るわけですが、なぜ長女が最初に「行かない」と言ったのかとか、かなり頼りない母親(というか、死んだ父の第三の連れ合い)に対する言動や、この四女に対するラストシーン近くの言葉など、何度も読み返して、ようやくその意味の深さに気づかされる、ひじょうに味わい深い話になっています。
『河よりも長くゆるやかに』も、基本的にこうしたお話でしたが、さらに深く、静かになっているような気がします。
第一話のラストで、四女は彼女たち三姉妹と一緒に暮らすために鎌倉に来て、以降は四姉妹の物語となります。
作者は鎌倉に暮らしたことがあるそうで、その土地の風景が作品の中で大きな部分を占め、雰囲気を盛り上げています。
第三作目では、少々四女の性格が変わっていて、尚かつ四女と彼女の同級生の物語で、他の三人の出番が無いのが不満ですが、まだ物語は続きそうなので、海街diary2を期待して待ちたい、と思います。
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